ジストニア
ジストニア(dystonia)は中枢神経系の障害による不随意で持続的な筋収縮にかかわる運動障害の総称。姿勢異常や、全身あるいは身体の一部が捻れたり硬直、けいれんといった症状が起きる。日本神経学会の用語は「ジストニー」と表記される。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋

ジストニアとは

ジストニアという病気は、筋肉の緊張の異常によって様々な不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態をいいます。ジストニアには、全身の筋肉が異常に動いてしまう全身性ジストニアと、局所のみの筋緊張の異常による局所ジストニアに大別されます。症状は筋肉の異常収縮によるものですが、筋緊張を調節している大脳基底核という部分の働きの異常によっておこると考えられています。原因のわからないものを本態性ジストニア、脳卒中や脳炎などの後遺症として起こるものを二次性ジストニアと呼びます。本態性ジストニアの中にはDYTという遺伝子の異常による遺伝性ジストニアというものがあり、15の型が知られています。日本では瀬川病と呼ばれるDYT5ジストニアと捻転ジストニアと呼ばれるDYT1ジストニアが主で、これらは主として小児期に症状が出現します。局所ジストニアでは、目のまわりの筋肉が異常収縮して目が開けられなくなる眼瞼けいれん、首の筋肉の異常によって首が曲がってしまう頚部ジストニア(痙性斜頸とも呼ばれる)などがあります。書字や楽器演奏などきまった動作時だけ症状がでて動作が妨げられるものを、動作特異性ジストニアと呼び、書痙の多くがこれに含まれます。これらは特定の職種に生じる傾向があり職業性ジストニアとも言われています。また精神疾患に用いる向精神薬の影響で出現するジストニア症状を遅発性ジストニア(tardive dystonia)と呼びます。

ジストニアの分類

本態性ジストニア (原因のよくわからないもの)

  • 全身性ジストニア
    • 若年発症型
    • 成人発症型
    • 孤発性
    • 遺伝性
  • 局所ジストニア
    • 痙性斜頚 (頚部ジストニア)
    • 眼瞼けいれん
    • 書痙
    • 職業性ジストニア
    • 痙性発声障害
    • その他

二次性ジストニア (脳の病気で二次的に生じるもの)

  • 脳性麻痺、脳血管障害、脳炎、先天性代謝異常などが原因となる

症状の特徴

症状が常に一定であること、発症の初期には朝は調子がよく、午後から夜にかけて悪化すること、体のある部分をさわったりすると症状が軽快したりすることなどが特徴です。全身性ジストニアでは進行すると全身の捻転がひどくなり、けいれん発作と間違われることもあります。多くの本態性ジストニアでは脳のMRIなどで異常がみられず、症状が理解しがたいため、ヒステリーなど精神的なものとして受け取られることも少なくありません。しかし精神的問題からだけでジストニアとなることはまれです。

検査所見

本態性ジストニアではCTやMRIでは脳の形に異常はみられません。筋電図で関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に動いてしまう所見(共収縮、相反性抑制の障害)が診断の助けになります。遺伝性ジストニアを疑って遺伝子検査をする場合もあります。

ジストニアの治療

 治療の最初は抗コリン剤などの薬物治療ですが、劇的な効果は稀です。痙性斜頸眼瞼痙攣では異常に動いている筋肉にボツリヌス毒素を微量注射し筋肉を麻痺させる治療が用いられます。これらの治療で満足のいかない場合は、手術治療を考慮します。手術治療は症状によって異なります。痙性斜頸ではボツリヌス注射と同様に異常に動く筋肉にいく運動神経を選択的に遮断する選択的末梢神経遮断術が安全で有効であるとされています。また、全身性ジストニアには脳内の淡蒼球という部分を慢性的に電気刺激する脳深部刺激療法が有効です。書痙など手の局所のジストニアには視床という部分を小さく熱凝固する手術が行なわれています。海外では二次性ジストニアに対して脊髄の髄液腔にバクロフェンという薬を持続投与する治療が行なわれていますが、日本では一般的ではありません。ジストニアの手術治療の歴史はまだ浅く、ごく限られた脳神経外科施設でのみ行なわれているのが現状です。

 全身性ジストニアに対して脳深部刺激治療を行なった場合、入院期間は施設によっても異なりますが、1ヶ月程度はかかります。費用は手術機器だけで300万円あまり、総額で400万円以上となります。患者様にご負担いただくのは通常この3割ですが、高額医療制度によってある一定以上の出費は公費から還付されます。また小児では育成医療という制度によってほとんど費用はかかりません。

ジストニアの予後

ジストニア自体で生命がおびやかされることはありません。また大半の患者さんは正常知能で知能が障害されてしまうこともありません。ただ、経過が長くなると首や手足などの骨が変形して脊髄を圧迫し麻痺やしびれなどの原因になる場合があります。原因が分かっておらず病気自体を根本的に治すことは困難です。しかし従来治療法のなかった時代から比べると、現在ではさまざまな治療によって、良好な経過をたどることも稀ではありません。
   
                    脳神経外科疾患情報ページより抜粋   (http://square.umin.ac.jp/neuroinf/index.html)
 
 【衝撃事件の核心】「目が開かない!」〝無限の苦しみ〟に悩むエリート息子を絞殺した母 難病「ジストニア」が招いた悲劇     

終わりの見えない苦しみに2人の精神は限界を超えた。大阪府東大阪市の民家で長男(33)を絞殺したとして6月、殺人容疑で同居の母親(67)が大阪府警布施署に逮捕された。長男は目が開きづらくなる症状に悩まされ、親子で病院を探し回った末に判明した病名は、脳神経系の難病「ジストニア」。長男は体の一部も思うように動かせなくなり、常に吐き気を催すような状態が続くなど、病状は悪化の一途をたどった。献身的に面倒を見ていた母親も心身ともに疲労が極限に達したのか。親子で心中しようと母親は長男の首を絞めた。しかし、自分は死にきれず、長男から依頼があったとする嘱託殺人罪で起訴された。

母親は「長男は目が見えない(開けない)病気を患っており、将来を悲観した」と供述した。長男を殺害した後、自らも命を絶とうとしたが、死にきれなかったと吐露した。

5年前から症状の兆候

 隣家の男性らによると、母親は約15年前、東大阪市の現在の自宅に引っ越してきた。夫とはすでに離婚しており、両親と死別してからは長男と2人暮らしだった。「(母親は)すらっとした身なりで謙虚な性格。到底人を殺すようには見えない」。男性ら近隣住民は口を揃える。

 長男は府内の国立大を卒業後、システムエンジニアとして、充実した生活を送っていた。しかし、5年ほど前からやっかいな症状に悩まされていた。

「目の奥が痛むんです」 長男がうつむき加減でこうこぼす姿を、男性は覚えている。コンピューター関係の仕事に就いており、長男も当初はストレスから来る一時的な症状と考えた。

 だが、症状は収まるばかりか、悪化の一途をたどった。神経痛からか目は開けづらくなり、肩こりもひどくなる。気分は優れず、吐き気が止まらない。しゃべる事さえ、おっくうになる日々が続いた。

 多くの病院を訪ね歩き、ようやく病名が判明した。脳神経系の難病「ジストニア」だった。詳しい病院が京都市伏見区にあることが分かり、母親と長男は通院治療を続けた。

「ジストニア」は難治性

 2人を追い詰めたジストニアとは一体どんな病気なのか。

 NPO法人「ジストニア友の会」のホームページによると、ジストニアは「脳や神経系統の何らかの障害により、持続的または不随意的に筋肉が収縮したり固くなったりする難治性の疾患」だ。思うように体が動かなくなる一方、意思に関係なく筋肉が動き、動作や姿勢に異常をきたす。

 川崎市立多摩病院の堀内正浩・神経内科部長は、長男のように「目が閉じてしまう」ケースについて「(1)眠くて、まぶたに力が入らず落ちてしまう(2)ぎゅっと目をつぶってしまう-の2ケースがあるが、ジストニアは後者」と解説する。

 原因はストレス、薬の副作用、外傷などだ。日本神経学会ジストニア診療ガイドライン委員会によると、国内では10万人あたり13〜15人の孤発性(遺伝ではない)ジストニア患者がいると推計される。そのうち、眼瞼(がんけん)けいれんの症状を抱えているのは約9千人という。

 だが、治療しても症状はなかなか改善しない。就労が困難で身体障害者手帳の申請を行っても、まぶたが閉じてしまうだけで目の機能自体には異常が認められず、障害認定されないケースが目立つようだ。

 働き盛りの年代にもかかわらず、重い病に悩まされる日々。平日に近くの公園まで一人で苦しそうに散歩する長男を見るに付け、胸が締め付けられた。だが、近所の住民らは詳しい事情を知らない事もあり、誤解して「大の大人が働きもせず、昼間からふらふらして…」といった悪評が立つようにもなった。

 「ジレンマだった。つらい病気なんだと(住民に)言ってやりたかった。でも、それは(母親が)望んでいない。苦しむ(長男の)姿を見ていたら、気安く『頑張れ』とは言えない。『無理だけはするなよ』と、毎日そんな気持ちだった」

 だが、そんな願いもむなしく、母子は約5年に及ぶ闘病生活に「心中」という手段で終止符を打つ事を決意した。

                                     2016年7月29日 MSNニュースより抜粋

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